秦良玉の疑惑とその再調査結果

こんにちは。おらふと申します。

前回、秦良玉の疑惑は白であると断定致しましたがそれを覆す史料が出てきた為再調査させていただきました。早計な判断、ここに謝罪させていただきたいと思います。これからは複数人体制で検証し再発防止に務めさせていただきます。

 

それでは本題に入らせて頂きます。まず最初にお伝えしたいのは、秦良玉の問題に「剽窃」という単語は正しくありません。前回の調査時にも説明致しましたが、秦良玉の宝具の詩歌は文学作品のひとつでありそれ本体には著作権が切れているはずです。(翻訳や第三者が改定したものであるならば話は別である。)

なので、今回の疑惑のポイントは「秦良玉の宝具の資料がインターネットで拾ってきたものかどうか」という点です。

 

秦良玉の詩歌に関しては何種類かのパターンが存在する事が確認されています。崇禎遺録バージョンであったり、石柱廳志バージョンであったりする訳なのですが、秦良玉史料集成という本にて記載されているモノ、もしくは中国国内からの学術論文検索サービスを用いたら閲覧出来るモノ等様々です。しかし、FGOのバージョンはその秦良玉史料集成のものとも崇禎遺録とも違うのです。それはまるで様々なバージョンからツギハギにされたようなものでした。

 

そこで百度百科(中国の百科事典。Wikipediaのように様々なユーザーが編集可能である)の過去ログを全てチェック致しました。すると、2008年2月3日にFGOと同じバージョン のものが存在する事が発覚。FGOと同じバージョンのものを中国語のXバージョンとこれからは便宜上呼称致しますが、中国語のXバージョンの出典が大明朝的另类史という本である事まで突き止められました。この大明朝的另类史は国会図書館にも存在しない本である為、日本国内からの検証が不可能という点もあり、現在中国の検証をなさってる方がチェック中でありますが、2013年9月21日に大明朝的另类史の資料的価値が低いのではという事で百度百科から中国語のXバージョンの詩歌は消されてしまいました。

 

2008年から2013年までの長い間百度百科に記載されていた為、このXバージョンの詩歌はその時期のサイトへの影響が顕著に見られます。

そのような中2009年9月16日にニコニコ大百科に秦良玉のページが作成されました。そこにのった詩歌はもちろんXバージョンです。しかし、XバージョンはXバージョンでも百度百科との違いが幾つかあります。それは字体です。中国語から日本語へ移される中で字体が変化したと考えられます。そして、その字体が変化された日本語のXバージョンがFGOのものと全て一致したのです。その字体の変化があまりにも一致しているという所はしっかり抑えなければならないポイントです。例えば「憑」という漢字、簡体語では「凭」とかくため、これが日本語の字体に変化するのは至極当然であります。が、中国語バージョンで「学」だったものが「學」になったり、「万」が「萬」になったりと、日本で広く一般的に使われている漢字もニコニコ大百科では変化しています。そして、その変化された所までFGOのものと全て一致するのです。

また、ニコニコ大百科の秦良玉のページは最終更新が2011年3月20日であるためFGOよりも昔のものであると言えます。

 

ここで百度百科に戻ってみましょう。2013年9月21日に消された中国語のXバージョンではありますが、2014年4月24日に追加され直されています。しかし、この段階では中国語のXバージョンの引用元がかかれていない為2014年8月14日に中国語のXバージョンは削除され、2016年9月30日に別バージョンが掲載、その後また1度別バージョンが掲載され直し、現在に至る。という流れを辿っています。

 

しかし、まだFGOが独自にツギハギを行った可能性も残っているので今度はその角度から検証してみる事にしました。

別バージョンの詩歌の一定数のものに「掃虜胡」という部分があるのですが、これが何らかの問題があるという事でFGOの方で「作蝥弧」のバージョンを採用した。という可能性です。

(ここの差異についてはとても複雑な事情があるため、何らかのという形でぼかさせていただきます。詳しくは遊牧民様が纏めたNoteをご覧ください

https://note.com/wuguangong/n/n5d473a21011f

)

 

先程上げた秦良玉史料集成にも「作蝥弧」とするバージョンの詩歌も載ってはいます。載ってはいますが、FGOのバージョンとはまた別のところが違います。秦良玉史料集成のそのバージョンには「北来高唱勤王曲」という箇所があるのですがFGOのバージョンでは「凱歌馬上清平曲」となっているのです。「北来〜」にしない理由が見当もつかず、秦良玉史料集成の他のバージョンにも「凱歌馬上清平曲」というものはなく、「凱歌馬上清吟曲」となっているのです。

この事からFGOバージョンが何らかの事情に配慮してツギハギにしたものだという可能性は低くなりました。また、秦良玉史料集成は国会図書館の関西館にある為国内でも閲覧出来るものなのですがその秦良玉史料集成にのっているバージョンではなく、国会図書館にもない大明朝的另类史のバージョンの文章が用いられてる事も明らかになりました。

 

しかし、まだ最後の可能性井上由美子作の「女将軍伝」があると考え、そちらの検証に移りました。「女将軍伝」は日本国内で数少ない秦良玉を題材にした書物です。初版発行は2001年であるため、大明朝的另类史発行の2007年より前です。

「女将軍伝」の結果は率直に言って検討はずれでした。「女将軍伝」にのっている詩歌は日本語訳であって、しかも「掃虜胡」のバージョンであり、「女将軍伝」の引用元は秦良玉史料集成だったのです。この事からFGOは「女将軍伝」を参考にしている可能性はかなり低いと考えられます。

 

長々と専門的な事を書いてきましたが、ここで調査結果の纏めに移行させていただきます。

FGOの秦良玉の詩歌はニコニコ大百科又は百度百科をソースにした可能性が高いというものです。絶対的に黒であると証明は出来ませんが、

・国内の書物にないバージョンが用いられてる事

・もし仮にFGO側が何らかの配慮をしたとするならばそれに適した国内資料を用いれば良いのに対し、国内から閲覧が困難かつ歴史的資料価値が低いものを使用したという回りくどい手を使ったという話になる事。

からもグレーであると言えるでしょう。

また、百度百科は中国語の過去ログなのに対し、ニコニコ大百科は日本語かつ、FGOの資料を制作する段階から見れたと考えられ、漢字の字体まで全て一致している事からニコニコ大百科を参考文献にしたという可能性が高いかと言えると思います。しかし、国内からの調査では限界がある為Xバージョンの原典が更新される可能性がある事も事実です。(国内からアクセスできる資料を用いず、国内からアクセスできない資料を、FGO側が参考文献として用いたかどうかは個人的に懐疑的ではあるが。)何度もいいますがあくまで現時点で調べられる段階で「白」とは言えず「黒」に近いグレーの段階である事は明確に宣言させていただきます。

 

冒頭にも申し上げましたが、これは剽窃という犯罪ではなく文献をインターネットからそのまま裏取りをせず使用した可能性についての検証です。犯罪でなく、黒であると証明は当人が説明する以外不可能であるという事は絶対に間違えないでください。

法的問題の一方でもし、これがニコニコ大百科からとったものだと仮定するならば、今までインタビューで言っていた参考文献を買っていた

とは何だったのかという感情的な問題も発生するかと思います。これらはナポレオンの剽窃疑惑が個人サイトからの孫引きであり、ディオスクロイの2件目も個人サイトからの疑惑であったという所も重なるかと思います。犯罪とは別に

「本当に文献を買っていたのか」という点も明かされることを切に望みます。

 

ここまで読んでいただきありがとうございました。

 

 

(1部修正しました。「差別的内容」であるかどうかでFGOが判断したか→何らかの事情でFGOが判断したか というものになります。歴史的背景を考慮して変更させていただきました。)